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RESEARCH AND BRIEFINGS

原油価格が世界の地政学を 変える

 


政治的出来事は、原油価格に大きな影響を及ぼしますが、原油価格も政治的出来事に強い影響を及ぼします。2016年は、後者の影響が強く働き、原油価格の下落が甚大な地政学的な影響をもたらしました。

石油産業を取り巻く世界的な経済状況の変化に最も影響される石油大国は、どの国でしょうか?マーシュによる「2017年石油・ガス産業リスク/リワード指数」は、石油産業との関連で見た各国の魅力を、それぞれの国に参入して事業を行った場合のリスクとリターンとのバランスに基づいて数値化し、ランク付けしたものです。

本稿では、グローバル企業、投資家、そしてもちろん、エネルギー産業に影響を与えるような長期的な経済的変化を遂げる可能性のある石油大国6カ国について考察します。本レポートは、政治/マクロ経済/金融/業界リスク分析における有力な独立系情報会社であるBMIリサーチのデータと知見に加え、多国籍企業と投資家が直面している課題のグローバルな概観を示すマーシュのポリティカルリスクマップ2017年版を参考にしています。

原油価格の低迷は、その他の社会経済的要因と相まって、ベネズエラでは深刻な食糧不足を、ナイジェリアでは長引く景気後退を招いています。サウジアラビアなどの伝統的な石油大国でさえも原油収入の減少に対応するために、水と電気に対する公的補助金を削減しています。

水圧破砕法(「フラッキング」とも呼ばれる)の技術が進歩したことにより、シェールオイル生産者の平均損益分岐価格は40%以上も下落しています。

原油価格が1バレル120米ドルだった時代はとうの昔に過ぎ去り、シェールオイルは現在、ノースダコタ州やモンタナ州などの米国のいくつかの州で、1バレルわずか29米ドルで採掘されています。

米国は今年、サウジアラビアを抜いて世界トップの産油国になる勢いですが、そうなった場合、今後数年にわたるエネルギー産業の地政学的情勢を塗り替えることになるでしょう。そして、その影響が及ぶ国々において事業や投資を行っている企業は打撃を受けるでしょう。

注視すべき国

リビア

カダフィ政権後のリビアは、2つの競合する政権の対立で混迷を極めています。国家の著しい分裂、脆弱な制度的能力、治安の空白の慢性化を考えると、事業環境は2017年も非常に不安定になる可能性が高いです。政治、宗教、部族の違いによる分断は深く、統一政府樹立に向けた歩みは遅いです。和平プロセスが頓挫すれば、同国の石油インフラが紛争の焦点となり、輸出と収入の両方に打撃を与えるでしょう。


リビアは2016 年12月、シャララ油田とアル・フィール油田の生産を再開させ、原油生産日量90 万バレルの増産目標を設定しました。しかし、最近の実績を見ると、産出量は日量5 万バレルにまで落ち込むこともあります。和平プロセスの結果がどうなるにせよ、広範にわたるインフラへの打撃と慢性的な投資不足は引き続き生産に影響を与えると思われます。したがって、産出量を日量100万バレル台のかなり上まで引き上げるには時間がかかりそうです。リビアは今後数年にわたり、典型的な破綻国家の様相を呈するでしょう。

サウジアラビア

サウジアラビアの経済は引き続き、炭化水素資源、特に原油に依存するところが大きいです。しかし、原油価格の長引く低迷もあり、大規模な財政再建や経済改革を伴う国内の変革計画が進んでいます。副皇太子ムハンマド・ビン・サルマーンの「ビジョン2030」が掲げる目標の一つは、石油への過度の依存からの脱却です。その他の改革には、国営の石油・天然ガス会社であるサウジアラムコへの民間セクターの参加促進などが含まれます。

エネルギー産業にとって、こうした変化は原油価格の上昇に繋がる可能性があります。一方で、同国の福祉補助金の原資は現在、その大半が石油によって賄われていることから、原油収入の減少に対応するために国民への補助金が削減されるかもしれません。

これは、今後10 年にわたり大きな社会経済的な影響を与え、同国におけるポリティカルリスクを著しく高めるでしょう。短期的には、改革があまりにも大きな不安定を引き起こす場合、政権は一部の改革を縮小、変更、あるいは中止することによって不満を抑えようとすると思われます。

ナイジェリア

産油地帯ニジェール・デルタは依然として、ナイジェリアの炭化水素セクターにとって最も深刻なリスクだと言えます。複数の武装集団、ニジェール・デルタの地元指導者、連邦政府の間で交渉が続いています。合意に達するまで、ニジェール・デルタ・アベンジャーズなどの武装組織やその他の小規模集団による同国のエネルギーインフラに対する攻撃の脅威は依然として高いです。2016 年の激しい攻撃と、政府がそうした攻撃を阻止できなかったことは、投資家の記憶に長く残り、ナイジェリアの炭化水素セクターへの投資の喪失に繋がるでしょう。

産出量は、2016 年の平均日量180 万バレルから今年は平均日量214 万バレルに増えると予想されます。原油収入の増大は、同国における現在の燃料不足の緩和に役立つでしょう。ナイジェリアでの長期的な生産を確実にするためには、いくつかの大規模な最終投資決定(FID)が必要となります。しかし、プロジェクトが今後2年間にFID に到達する可能性は著しく低下しており、2018年以降の生産量の減少に繋がりかねません。現在の交渉がうまく行けば、原油生産の回復も実現するでしょう。

イラン

ドナルド・トランプ氏が米大統領に選出されて以来、対決姿勢を強めている米国の外交政策とそれに対するイランの報復措置は、包括的共同行動計画を頓挫させかねません。その結果として、以下の事態が生じる可能性があります。

• 2017 年の最初の数カ月に続いた政治抗争により、イラン国内の強硬派が支持を集めました。その結果、比較的穏健派のハサン・ロウハニ大統領は、それほど穏健ではない候補者に敗れて権力を失いました。
• イランに対する米国の追加制裁、あるいは二次的な制裁の再実施により、外国企業による同国とのビジネス取引がいっそう困難になります。

イランの原油生産の見通しは弱まっているので、当面の影響としては原油価格に有利に働くかもしれなません。しかし、今年はほとんど変化がないものと考えられます。イランに投資している外国人投資家はこれまでに出資の確約をしていません。この状況が続けば、強まる保護主義と外国投資の低下によって新規プロジェクトが落ち込むため、イランの中期的な石油見通しは悪化します。

イランでは5月に大統領選挙が予定されており、ロウハニ大統領が2 期目に再任されるかどうかが決まります。これは、イラン政府が2015年に世界の主要国と締結した画期的な核協定を維持するかどうかを決定付ける上で重要な意味を持つでしょう。

ベネズエラ

経済的・政治的危機の渦中あるベネズエラでは、ポリティカルリスクは相変わらず深刻です。この危機は、2017 年に決定的な転機を迎える可能性が高いです。

一つの大きなリスクは、ベネズエラの公的債務が不履行(ソブリン・デフォルト)に陥る可能性が高いことです。ソブリン・デフォルトになった場合、政策の大きな調整を余儀なくされ、政権交代が起こり得ます。一方、ベネズエラ国営石油公社(Petróleos de Venezuela, S.A / PDVSA)は、長年の非効率な経営と長引くコモディティ価格の低迷により崩壊寸前です。産出量が長期にわたり減少していることと、原油価格が十分に上昇しない状況が相まって、PDVSAは次に返済期限を迎え巨大債務の返済に苦しむことになりそうです。

債務不履行となった場合、石油業界の財政はさらに強い制約を受けることになり、2017年の産出量低下をさらに悪化させるでしょう。ベネズエラのあらゆる石油プロジェクトに関わる事業者であり最大のステークホルダーであるPDVSA の財源不足を背景に、プロジェクトに参加する民間セクターに対し、特にオリノコ地域の重質油田からの生産を担うように求める圧力が強まるでしょう。しかし、今年の資金拠出を確約していた企業の大半は手を引く可能性が高く、国全体で生産低下がいっそう急速に進むことになりかねません。

インドネシア

インドネシアの石油産業の上流部門におけるナショナリズムの高まりは、長期的な生産増大の見通しにとって大きなリスクとなっており、民間の外国投資の対象としての同国の魅力を著しく失わせることになりかねません。昨年、国有石油会社プルタミナに対してさらに大きな優遇措置を与えるというナショナリズム色の濃い石油・ガス法が導入されたことは、投資家の意欲を殺ぐ可能性が高いです。石油探査と生産への民間の参画は、新たに設立された国有企業BUMN-Kとの協力契約の下で制約を受けることになります。

さらに、同法は、コスト回収や生産物分与などのいくつかの重要なメカニズムに関して明確なガイドラインを示しておらず、投資家心理にマイナスの影響を与えると思われます。下流部門の民間企業は、政府発行の免許を所持していれば、通常通り営業することができるでしょう。しかし、新法は、新たに設立された下流事業者のBUP が石油の強制的な販売・購入と国内消費用のガスの生産を一元的に管理することを定めている。これにより、全ての下流企業は、その燃料生産量の大部分をBUP に販売しなければならなくなります。

石油・ガス業界における地政学リスクの影響の評価

本レポートで詳述した国やマーシュの2017年石油・ガス産業リスク/リワード指数において取り上げているその他の国が抱えている課題を考えると、これらの地域の石油・ガス産業における事業リスクや、自社のサプライチェーン全体への影響をよく検討する必要があります。価格の下落、政治的指導者の後継リスク、社会経済的な課題、政治的緊張に起因する事業中断が多国籍エネルギー企業に与える影響を評価することが、これまで以上に重要になっています。

それに加えて、石油・ガス収入に大きく依存している国に大規模な資産を保有している多国籍企業は、原油価格がポリティカルリスクに及ぼす影響を把握し、事業継続計画を策定する際に考慮に入れるべきです。

石油・ガス産業リスク/リワード指数について

「石油・ガス上流産業リスク/リワード指数」は、BMI リサーチのデータを利用して、石油産業との関連で見た各国の魅力を、それぞれの国に参入して事業を行った場合のリスクとリターンとのバランスに基づいて数値化し、ランク付けしたものです。指数は、産業固有の特徴と、全体的な経済、政治、事業環境の特徴を組み合わせて算出されます。

指数を算出するためのデータは、ある産業における投資家の意思決定にとっての重要性という観点から重み付けされる。これにより、機会とリスクとのバランス、そして業界
固有の特性と全体的な市場の特性とのバランスに基づいて、各国における事業や投資の現実をよりきめ細かに、かつ正確に反映することができます。
BMI リサーチについて詳しくは、bmiresearch.com をご参照ください。

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