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ニュースレター

保険を活用したリスクマネジメント実践のポイント Vol.2

日本企業がリスクマネジメントで、海外企業に勝つために必要なこと

2022年5月31日

日本企業がリスクマネジメントで海外企業に勝つために必要なこと

保険料率の自由化や取り巻く環境の変化により、日本の大手企業は成長に向けた「マネジメント」だけでなく、「リスクマネジメント」でも海外の競合会社に引けを取らない内容での実践が求められています。リスクマネジメントを推進するうえで、今、自社がどのようなリスクにさらされているのかを検証するため、定期的なリスクの洗い出しを多くの企業が実施しています。しかし、その次のステップとなる全社統一のリスクマネジメント基準の策定はまだあまり進んでいません。

さまざまなリスクのなかで、どのリスクを保険化するのか。保険化する場合、限度額や保証内容、免責額(自己保有額)をどう設定するか。また、リスクは顕在化していても、保険手配しないものについて、どのようなリスクマネジメント施策を講じるのか(図1参照)。

これらの基準を全世界ベースで策定しておくことにより、M&Aなどにより急に事業会社が増えることになっても、リスクマネジメント対応に迷うことがなくなります。

図1. 全リスクに関するリスク許容額

日本企業で目立つのが、リスクごとの最適コスト配分を考慮せず、長い間保険プログラムの更新を続けているケースです。たとえば、火災保険や貨物保険、自動車保険など保険種目ごとに年間の予算が決められている場合でも、なぜその配分になっているのかを長く検証したことがないという企業もあります。

これは日本企業における特有の課題で、保険業界が護送船団方式だった頃の名残と言えるでしょう。自由化以前は、損害保険会社が販売している保険商品をほとんど比較検討せずに購入することが一般的で、当時の保険料配分について抜本的な見直しがなされずに現在に至っているのです(図2参照)。

図2. 保険手配の全体像(コスト・補償内容)を把握しているか(424社)

さまざまなリスクのうち、保険化すべきリスクはどれか、保険以外のリスクマネジメント施策を採るべきリスクはどれなのか。また、企業全体として、保険の活用をはじめとするリスクマネジメントに、どの程度コストを負担すべきなのかといったことを、競合他社をベンチマーキングしながら、変化のスピードが早い現在のビジネス環境のなかで定期的な検証が求められます。

グローバル保険プログラムの導入

そうしたなか、海外進出に伴って全世界の法人を包括的にカバーする「グローバル保険プログラム」を導入する日本企業が増えています。グローバル保険プログラムは欧米の多国籍企業を中心に発展してきたもので、全世界の事業所のリスクマネジメントを本社が一括管理するうえで非常に有効なツールです。また、全世界の事業所を取り巻くリスクを一括して保険会社と交渉すれば、保証内容の拡充とコスト削減を同時に実現できる可能性もあります。

ただし、日本企業が単に欧米多国籍企業のグローバル保険プログラムを模倣するとうまく機能しない場合が多いのも実情です。日本と欧米では保険会社の引受方針やサービスネットワーク、保険契約者側のガバナンス体制などが異なることから、日本企業にとって狙いどおりの保険プログラムを組成できなかったり、組成できても自社の運営面で問題を抱えたり、またグローバル保険プログラムのベネフィットを十分に享受できないことが多いのです。

欧米多国籍企業のグローバル保険プログラムは、あくまでも本社によるリスクの一括管理体制の実現と、保険会社と一括交渉することによるレバレッジの最大化に主眼が置かれています。グループの全体最適の実現が究極の目的なので、個々の現地法人の固有のニーズはあまり考慮されません。特に米国企業にこの傾向が強く、グローバル本社による決定事項がトップダウンで現地法人に指示され、現地法人による変更は許可されないことが多いのです。一方、日本企業は、海外拠点、特に買収によってグループの一員となった海外法人には、大きな裁量を与えている場合が多く、日本からのトップダウン方式によるリスクマネジメントは現地の反発を招くおそれがあります。

グローバル保険プログラムを検討するには、まずは導入の目的をはっきりと定めることが肝要です。一括交渉による全体的なリスクコストの削減なのか、保険会社や保険仲介業者(保険ブローカーや保険代理店)の統一による情報の集約なのか、あるいはより高い限度額や、より広い保険カバーの獲得が目的なのか。自社のガバナンス体制に合ったプロセスで検討を進め、導入後にプログラムの維持・管理を円滑に行える体制を事前に整えておく必要があるのは言うまでも有りません。

さらに、国内・海外のリスクマネジメントを担当する人材を育成し、リスクに関するコミュニケーションを改善することにより本社と海外現地法人の認識のズレの解消を図り、グローバル保険プログラムのベネフィットが海外現地法人にも伝わるよう、本社主導で改善を続ける必要があります。

 

 

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