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気候変動と不動産: リスクマネージャーが投資委員会に参画する理由

不動産業界における持続可能性への取組は、デベロッパーにとどまらず、投資家にも及んでいます。不動産投資家がESG基準を投資戦略に組み入れ、ESGを考慮した経営を行うケースが増えています。

Schroders Real Estate社によると、気候変動の影響を最も受けやすい世界5大都市のうち、アジア圏内の4都市(東京、深圳、香港、上海)が占めています1。世界の二酸化炭素排出量の約40%を不動産が占めている2ことから主要な不動産オーナーは、二酸化炭素排出量を削減するための具体的な目標を掲げており、アジアのデベロッパーもこれに対応しています。米国以外で2022年にLEED認証を取得した建築面積が最も多い国は中国がトップで、インドがそれに続いています。韓国とフィリピンもトップ10以内に入っています3

不動産業界における持続可能性への取組は、デベロッパーにとどまらず、投資家にも及んでいます。不動産投資家がESG基準を投資戦略に組み入れ、ESGを考慮した経営を行うケースが増えています。不動産投資家が重要視するESGデューデリジェンスは不動産のライフサイクル全体にまで及んでいます。例えば不動産の取得、リース、資産管理などです。

しかし、課題は山積しています。特にテナントの誘致や 引き留めには多大な労力が費やされていますが、長期的視点での財物リスクへの対策はあまり具体的な進展が見られません。この点においては、投資家にとって2つの大きな阻害要因があります。一つ目は、不動産投資家の間で、気候変動による影響は投資期間を超えてからも顕在化するという共通認識が得られていないこと、二つ目として、不動産投資家が長期的なリスク評価とその軽減策を信頼していないことが挙げられます。これらの課題に対処し、克服するためには、リスクマネージャーが投資委員会に参画し、気候変動に対するリスク対策を考慮した意思決定を行う必要があります。

アジアの主要都市の脆弱性が際立っていることに加え、不動産業界がESGを重視するようになっていることから、長期的視点での財物リスクに向き合い、対処することが急務となっています。リスクマネージャーは、経験豊富なリスクアドバイザーと協働することで、適正な資産評価、投資への期待値、キャッシュフローへの影響、プロジェクトのリターンへの影響、さらには気候変動による将来的な評価への総合的な影響などを確実に把握し、正しい投資戦略を見極めることができます。

気候変動問題が深刻化する中、投資家が抱える課題を理解するために

 

不動産投資の領域では、特に気候変動への懸念の高まりを背景に、いくつかの課題が顕在化しています。

保険会社の引受意欲と消極性、それに伴う引受要件の変化

不動産投資家が直面している主な課題の一つは、巨大自然災害(Nat Cat)にさらされる地域での損害保険料の高騰です。巨大自然災害の脅威がより顕著になるにつれ、それらに対して脆弱な地域の不動産は保険料が高騰し、投資家のリターンに大きな影響を及ぼしています。

保険会社がこの問題の鍵を握っています。自然災害による財物損害は、10年以上にわたって毎年世界の保険引受事業に損失をもたらしており、保険会社はこうした損失を是正するため、補償の制限を厳しくし、保険料を高く設定するとともに、引受の対象とする資産を限定するなどの対策を講じています。保険会社はまた、免責金額の引き上げやリスクの自己保有を通じて、財物リスクの一部を被保険者に転嫁するよう求めています。

これに加えて、リスク・データへの注目も高まっています。保険会社は包括的なリスク・データの提供、現地調査の実施、過去の調査における提言の検証を要求しています。インフレ環境下では、保険会社は不動産評価を更新して精度を高め、保険金請求に比例払が適用されるような一部保険を避けることが重要です。比例払が適用された場合、被保険者は資産評価に対して一部保険となった割合に基づいて支払保険金が縮小されます。

したがって、専門家による精度の高いリスク定量化と正確なリスク評価は、その資産特有の巨大自然災害に対する脆弱性を正しく反映し、それを補償するための方策を講じる上で不可欠です。そうすることで、気候変動という多面的な課題に対応しつつ、収益の変動が大きい中でも予測されるリターンを確保し、オーダーメイドの保険を設計することが可能になります。

複雑な規制や ステークホルダーへの対応

不動産投資家が気候変動の課題に取り組む一方で、複雑な規制や ステークホルダーの動向を把握する必要があります。規制ガイドラインの変化や ステークホルダーからの期待の高まりにより、より高い透明性と責任 が求められています。

規制は大きな壁となっています。香港金融管理局(HKMA)の「脱リスクおよびファイナンシャル・インクルージョン」に関する規制など、規制要件がますます厳しくなる中、気候変動に関する情報開示の義務付けを求める動きが活発化しています。上場不動産のオーナーや管理者、不動産投資信託(REIT)に対し、気候変動リスクへの影響に関するより高い透明性とデューデリジェンスを義務付けることで、こうした規制上の要求は、不動産関連企業にさらなる圧力をかけています。

規制面だけでなく、不動産オーナーや 投資会社は、ステークホルダーや株主からの監視の目も厳しくなっています。気候変動擁護論が、投資や企業行動に対する組織の責任を問い続ける中、リスクマネージャーは、持続可能性と倫理規範に向けた組織の適切な調整を行い、既存の企業におけるリスクマネジメントの枠組みにおいて、強固な危機管理とコミュニケーション計画を構築することが推奨されます。

変動の激しい状況下での事業継続性の確保

投資家は、既存の事業継続計画(BCP)の包括性を見直し、評価する必要があります。正確な気候モデリング・データに基づかない既存の戦略では、“想定外の”異常気象を十分に把握できないと考えられます。保険会社の支払保険金の増加は、保険会社のコスト上昇にもつながり、純利益を減少させているため、現在から将来に渡り、損害の頻度と規模を軽減する高度な対策が必要です。

投資家もまた、市場の動きを察知し、気候変動が投資先の不動産にどのような影響を与えるかを検討する必要があります。現在では、資産レベルでの予測モデルはより正確なものとなっており、買い主は、キャッシュフローの把握がより容易になってきています。このような影響は、売り手がその物件を手放す際の利回りに影響を与える可能性があります。そのため、定期的に気候変動や予測モデルを更新することで、BCPを最新のデータやシナリオに対応した適切なものに保つことができます。

不動産投資家にとって重要なことは、事業継続計画に積極的にアプローチし、リスクマネージャーを通じて保険会社と協調的で透明性の高い関係を築くことです。

今後の方向性

不動産オーナーや投資会社は、気候変動リスクマネジメントに 対して包括的なアプローチを採用する必要があります。一つは、経験豊富なリスクアドバイザーや保険仲介業者のデータ、テクノロジー、専門知識を活用し、気候変動リスクの盲点を特定し、適切な対策の優先順位をつけることです。また、もう一方は、保険会社のネットワークを活用し、気候変動リスクに対して十分な補償が提供されるテイラーメイドで費用対効果の保険プログラムを構築することです。

このような観点から、不動産オーナーや投資会社にとってリスクアドバイザーは非常に重要な存在です。投資委員会に参画しているリスクマネージャーと協力することで、気候変動リスクや 課題に対する理解が深まるだけでなく、考えられる解決策を評価し、適切な判断をとることができます。これは、単に取り入れるというだけでなく、経営陣の意思決定が先見性をもって行われ、慎重さとバランスを保ち、気候変動に関する課題が山積する中で長期的に持続可能な企業であるための戦略的な動きなのです。

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