by 平賀 暁 マーシュ ブローカージャパン
後半では、日本企業が直面する課題への対策をご紹介し、リスクの性質を知ることと、リスクマネジメントのプロセスに沿ってリスク対策を実施することについて述べます。
技術革新や地政学上の緊張などにより事業環境は複雑化しています。持続的な成長を目指す日本企業はグローバルリスクの潮流(前編)をどのように捉えているのでしょうか。
リスクの性質と連鎖
グローバルリスク報告書で紹介されているEOS(Executive Opinion Survey)という世界各国のビジネス経営者向けのアンケート調査で、個社にとって今後2年に亘ってビジネスの成長を阻害するリスクのうち、日本企業の経営層が回答した上位5位リスクは経済リスクと環境リスクで占められています。
1位:人材・労働力不足/経済リスク
2位:非天候性自然災害(地震、火山等)/環境リスク
3位:景気後退(不況、停滞)/経済リスク
4位:異常気象(洪水、熱波等)/環境リスク
5位:エネルギーの供給不足)/経済リスク
図表3は「国家間の武力衝突」によってどのようなリスクに波及することを示しています。企業が武力衝突を阻止することは至難ですが、その後に連鎖していく種々のリスクへの対策を講じることは可能です。前述した環境リスクについても同様のアプローチが可能です。
地震を起点にして、設備などの損壊が起きる可能性が高く、その後に連鎖する幾つかのリスクについては、個社の資産の損壊を最小限に押さえること、代替生産拠点設置や複数のサプライチェーンを事前に想定しておくことで、操業停止や遅延等によって受ける逸失利益を軽減することができます。そのための事業継続計画(BCP)の策定は必須であることは、言うまでもありません。
リスクマネジメントのプロセスに沿ってリスク対策を実施する
図表4で示しているのはリスクマネジメントのプロセスチャートであり、企業を取り巻くリスクを把握することから始まります。洗い出されたリスクのうち、リスク単体の程度が大きいもの、あるいはリスクの連鎖が長くリスク総量が大きいものから対応策を講じることが肝要です。
リスク対策としては、保有、転嫁、軽減、回避とあります。これらは企業の財務体力や、個社の事業戦略を遂行する上で継続しなければならない事業分野を優先し、どの方法が適正であるかを判断しなければなりません。それらを分析・検証するツールとしては、防災診断(リスクインスペクション)、被害を受けた時の予想最大損害額(PML)の算出とプロテクションギャップに陥らない保険プログラムの組成、サプライチェーン分析などによってフローの脆弱性を診断するなど、リスク検証に対して様々な方法があります。
ビジネス経営者にとっては、短期や長期に関わらず、将来に起きるであろう複雑に相互連関するリスクを回避し、既存のガバナンス構造の限界に対処するための極めて重要な時期だと言えます。不安定化の悪循環を回避し、信頼を回復し、レジリエンスを高め、全ての人々にとってサステイナブルかつ包摂的な社会を実現するため、新たな協力体制を構築するための条件を整えるべきです。
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