同様に、2022年に経済リスク全体の評価が2021年より悪化したのは9カ国にとどまったものの、国や地域内の分裂は拡大し続け、社会不安やテロの脅威を煽っています。パンデミックの経済的被害からの継続的な回復が、多くの国々を経済的苦境から引き離すのに十分な牽引力を持つかどうかについて、明確な回答は用意出来ていません。パンデミック後のシナリオは、空中から感染するウイルス、ランサムウェア攻撃を開始するコンピュータコード、0.5度の気温変化が環境に与える影響など、様々な小さなきっかけによるユビキタスな脅威に対してより敏感になる可能性があります。同様に、ウクライナ危機の深刻化が食糧とエネルギーの安全保障を脅かすように、輸入に最も依存している国々は劇的な後退を被る可能性があるでしょう。
世界経済の加速とインフレ圧力は、社会的なレジリエンスや制度的な有効性が低い国や地域を取り残しつつあります。我々が分析した197の国・地域のほぼ60%がソブリン債のプロファイルの悪化を経験し、半数以上が国内暴動の高いリスクを示しています。この悪化は、アフリカやラテンアメリカなど、社会的・経済的格差がすでに大きかった地域や、ウクライナ危機の拡大に伴って顕著になっていますが、いくつかの予兆は、タイガーカブ経済圏[1]. を含む、よりレジリエンスのあると考えられる経済においても、破局の可能性を予見しています。同様に、アジア太平洋地域における緩やかな経済回復の指標は、ソブリン信用度、政治的暴力、為替交換・送金リスクなど、他の危険性には影響せず、すべて悪化しています。
一部の地域でワクチンやブースターが利用可能になった後も、企業や金融機関を取り巻く環境は依然として脆弱であり、小さな脅威でも全世界的な影響を及ぼす可能性があります。ポリティカルリスクと信用リスクを管理するためには、官民双方の様々な手段が存在します。政府が支援する輸出信用機関や多国間組織に加え、民間の強力なポリティカルリスク保険市場が発達し、投資家や企業が政治・経済危機を切り抜けるのを支援しています。不払いリスクから守り、サプライチェーンの回復力を高め、さまざまな国の人々や資産を保護するためのソリューションは、公的プログラム、民間の保険、またはその両方の組み合わせが考えられます。
伝統的な国境は、依然としてポリティカルリスクの重要な境界線となっています。しかし、世界がエネルギー転換とデジタル化を進め、同時に世界的なパンデミックから回復しつつある今、他の種類の境界線が及ぼす影響について考える価値は多いにあるでしょう。海上の境界線であるEEZの拡大、戦略的鉱物の地下埋蔵、規制がほとんどない宇宙という3つの環境は、貿易、地政学、ポリティカルリスクの将来を形作る境界線であると言えます。これらの環境が国や地域間の緊張にどのように影響するかを理解している企業は、これらの環境がもたらす潜在的な報酬からさらなる恩恵を得ることができるのです。
これらのリスクに積極的に対処するために、当社が提供できるサービスの詳細については、 Jp.Info@marsh.com までご連絡をいただくか、マーシュの担当者にご連絡ください。
[1] タイガーカブ経済圏とは、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの5カ国を指す。香港、シンガポール、韓国、台湾の豊かでハイテクな工業先進国や富裕な金融センターがすでに達成した技術や経済発展の輸出主導型モデルを踏襲しようとしている、「アジアの虎」と総称される国々である。