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アジアにおける喫緊のグローバルリスクを軽減する対策|専門家の見解

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世界経済 フォーラムが実施した最新のエグゼクティブ・オピニオン・サーベイ(EOS)によると、アジアの経営者層が最も差し迫ったリスクとして懸念している項目は「景気後退」と「人材不足」です。1

トランプ関税の発動も相まって 不確実性が急速に高まり、経済や社会に落ち着く兆しが全く見えない状況が続いています。入念に策定した堅牢なリスクマネジメント戦略でレジリエンスを保ちつつビジネスチャンスを掴むために、企業には今、何が求められているのでしょうか?

経済リスク、ポリティカルリスク、エネルギートランジション、人的資本分野を専門にするマーシュおよびマーサー の専門家たちは、「先回りして各種リスクを管理・軽減する事前対応型の取り組みが大切」との見解を示しています。

経済リスク:貴社は貿易の混乱や政治の不安定性を乗り越えて事業成長を加速できますか?

2023年には貿易制限措置が激増し、3,000件近い措置が講じられました。これは2019年の3倍に相当します。2国際通貨基金(IMF)の予測によれば、貿易の制限が強まった影響で7.4兆米ドルもの経済産出量が失われました。3地経済的な分断が進み、政治的不安定性も高まったがゆえに、アジア地域の企業に連鎖する悪影響が起きています。

その一例が2022年のウクライナ戦争です。「対ロシアの制裁と貿易制限措置により、ロシア企業がアジア企業から輸入した商品のインボイス(請求書)の債務不履行が増加した」と、マーシュでクレジット・スペシャリティーズ部門の責任者を務めるMark Wong は述べています。

Mark Wongはまた、2021年にミャンマーで起きた軍事クーデターにより、多くの企業がインボイスの不払いや債務の不払い、通貨の取引制限に直面した点を強調しており、 「取引信用保険ポリティカルリスク保険に加入していた顧客は損失や未回収債権に伴う損失の影響を軽減できたものの、未加入の顧客は資金繰りに窮した」と語っています。 

取引信用保険およびポリティカルリスク保険 などリスク移転/転嫁 ソリューションは、新市場への進出時に企業のキャッシュフローを守り、業務の健全性を確保することで、事業継続性の向上に寄与します。 また、多国籍企業は、投資を守るために、政治的事象や経済的事象、治安情勢などを注視しなくてはなりません。ワールド・リスク・レビューなどのインテリジェンスツールを活用すれば、複雑なリスク環境の理解に不可欠な知見・洞察を得ることができます。

民間投資を活用して、貿易制限などのグローバルリスクを軽減する方法

前述のケースと同様に、企業は政府が規制を見直すように促して、民間セクターからの投資を増やして代替的な貿易回廊(コリドー)を構築することが可能です。 マーサーアジアでインベストメント部門の責任者を務めるAdeline Tanは、この種の投資案件は小規模な案件が多数併存するロングテール型の特徴があり、長期的な視野で忍耐強く成果を待つ投資マネーが必要だと指摘します。民間の投資家は円滑な物流・輸送を実現する貿易回廊への投資に関心を示す傾向があります。利用者の定着と友好的な法規制が揃えば、各市場間で商品を簡単に移動可能な貿易回廊を構築できるでしょう。このような投資マネーはインフラ構築のほか、輸出入業者に不可欠なサービスを提供する企業向けの投資に利用され、投資先地域の経済成長を大いに加速させる新たな原動力となります。

「民間投資家がリスクを管理してプロジェクトを必要な基準を満たすには、地方政府の支援が不可欠。開発プロジェクトが円滑に進展するためには、明瞭な規制と迅速な許認可、タイムリーな承認が非常に重要である」と、Adeline Taは語っています。

より多くの投資家の関心を集めるには、投資の対価として、特定資産を対象に設備・機器や不動産などの持ち分を民間投資家に付与する資金調達モデルも有望です。この手法を採用すれば、適切な専門性を備えた定評ある企業の参画に制限がかかる恐れはありますが、民間投資家がスペシャリスト型のファンドマネージャーを手配することで、同様の機会を得ることも可能です。往々にして、この種のファンドマネージャーは業界での知識や経験を活かしてより多くのリスクを取ること、投資先プロジェクトへのグリップを強め、より大きな利益を手にしています。

人材不足:アジアの迫り来る人材危機に立ち向かう

人工知能(AI)の飛躍的な進化を受けて、アジアでは今、前例のない規模の成長機会が眼前に広がりつつあります。 しかし、優秀な人材不足という大きな壁が立ちはだかっています。残念ながら、アジア地域では高齢化社会の到来やミレニアル世代の増加を背景に人口動態が変化し、人材不足を取り巻く問題が複雑化しています。その影響により、新たなスキル人材を求める声が高まる悪循環に陥っています。

生成AIが効率性や生産性の向上に貢献すると期待されているにもかかわらず、生成AIを採用しているアジア企業は3社に1社だけです。2024年の調査に回答した企業のうち、半数が生成AIの活用には継続的なリスキリングが必要だと認識しています。しかし、2025年のグローバル人材動向調査を紐解けば、異なるスキルの習得ニーズが生じたと回答した企業はわずか34%に留まっています。

この差異は、組織に横たわる大きな価格差を浮き彫りにしています。つまり企業は、人間と機械のポテンシャルを最大限に発揮して未来の労働生産性を飛躍的に高めるために必要なスキルを明確に把握できていないのです。

マーサーアジアでキャリア部門の責任者を務めるLewis Garradは「市場が変わりゆく中で仕事をさらに魅力的に、また思慮深く自動化を推進し、従業員をリスキリングさせるために、仕事を再設計する必要性に迫られている」と語っています。言い換えれば、要員計画(ワークフォースプランニング)に秀でた企業は成功を収め、外注に依存するだけの競合他社を上回る成長を遂げるでしょう。

その一例がスタンダードチャータード銀行の人材スキル戦略です。スキル活用型企業への変革を目指し、成功を収めています。同行はマーサーと緊密に連携し、需要が消滅する業務から需要が増加する業務へ従業員をリスキリングするなど、多様な取り組みを推進しています。同行によれば、人材戦略によって雇用を守っただけでなく、従業員1人あたり推定49,000米ドルの採用コストを節約し、定着率を向上させました。4

環境リスク:エネルギートランジションと気候変動適応の二重アプローチで気候変動リスクに対処する

2023年、アジアは異常気象や気候変動の脅威に世界で最も強く晒された地域でした。B2014年から2023年にかけて、アジア地域は自然災害によって推定6,390億米ドル相当の経済損失に見舞われました。5甚大な経済損失をもたらされているにもかかわらず、環境リスクはアジアの経営者層の主要な懸念事項から外れていたのです。

「気候適応はもはや、各企業が任意で取り組む戦略ではなく、アジア企業にとって重要な義務」と、マーシュアジアのエネルギー&パワー部門の責任者であるBenjamin Changは指摘します。 続けて「一方、気候リスクの背景に横たわる複雑な状況に適切に対処する取り組みも重要だが、多くの企業がデータの山から価値ある知見を手に入れる能力に欠けている。その結果、多くの企業は相応の投資を要する強固な気候適応対策を構築できずにいる」と語っています。

異常気象に関連するリスクに対する理解を促進させる取り組みであるマーシュのCCARE(Marsh Centre for Climate Adaptation and Resilience Excellence)は業界最高峰のデータ群とモデリング力を備え、企業が気候リスク分野の脆弱性を評価し効果的に気候変動に適応するための戦略策定に有効です。

Benjamin Changの見解によれば、エネルギートランジションは環境リスク軽減の土台となる取り組みであり、気候適応対策と連携して実施するべきです。

その一貫として、マーシュはドバイ電力・水道局(DEWA)を支援し、モハメッド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム・ソーラーパークで再生可能エネルギーの規模拡大と化石燃料依存度の低減に取り組んでいます。このプロジェクトが完成すれば、同ソーラー・パークは炭素排出量を年間650万トン以上削減できます。同プロジェクトにおいて、マーシュは起こり得る気候リスク、現行の気候レジリエンス水準、環境インパクト、財務面の不確実性、および業務面の課題を特定・評価したうえで、気候適応戦略を提言しました。

世界経済に変化が訪れ、人材や気候リスクにおいて課題が山積する中、アジア企業は革新的なレジリエンス戦略を推進する必要性に迫られています。 マーシュおよびマーサーの専門家は、各専門分野を横断して明確なメッセージを力強く発信しています。企業を取り巻くリスク環境が世界的に厳しくなる中、企業は事後対応にとどまらず、長期的なレジリエンスを構築する必要があるのです。世界経済の複雑性が増す中、リスクマネジメントや将来有望な労働力、気候変動へのレジリエンス対策に投資する企業は、成功を手にするでしょう。

グローバルリスク対策に取り組みましょう。 ぜひお気軽にお問い合わせください。

1 United Nations (2024), WMO report: Asia hit hardest by climate change and extreme weather, https://news.un.org/en/story/2024/04/1148886

2 International Monetary Fund (2024), High uncertainty and the unknown, High Uncertainty and the Unknown | IMF Annual Report 2024

3 International Monetary Fund (2023), The High Cost of Global Economic Fragmentation, https://www.imf.org/en/Blogs/Articles/2023/08/28/the-high-cost-of-global-economic-fragmentation

4 How Standard Chartered unlocked potential to get future-ready, Gloat

5 Swiss Re. How big is the protection gap from natural catastrophes where you are? https://www.swissre.com/risk-knowledge/mitigating-climate-risk/natcat-protection-gap-infographic.html#/region/Asia