【経済安全保障を通じて世界のリスクからビジネスを守る】
世界で起こる経済のリスクや脅威から、どのように日本のビジネスを守るかというのは日本政府の大きな課題であり、そのため国家や経済社会全体を守るために経済安全保障は、重要なファクターといえます。
経済安全保障は、リスク管理という側面だけでなく、ビジネス戦略の一環として捉えられるべきであり、企業や技術に対する付加価値を高める機会でもあります。
【産業技術基盤のリスクに対する対策】
経済安全保障推進法は、2022年8月1日を皮切りに、2024年5月1日までに、重要物資・先端技術・基幹インフラ・特許出願に関して、それぞれ施行されました。国際情勢は2022年に入ってから更に厳しさを増しており、経済安全保障に関する産業技術基盤への脅威リスクが拡大しています。経済安全保障の実施には政府だけでなく、民間の企業や研究機関との連携が不可欠であり、産業技術基盤が多角化している昨今では適切な政策や規制が重要となります。
日本では特に先進・先端技術(コンピューティング、クリーンテック、バイオテックなど)は、今後の経済発展に欠かせないものとされ、国家安全保障上も重要視されています。
同時に、これらの技術には膨大な電力が必要であり、その電力供給源についても考える必要があります。さらに、自動運転やエネルギー効率の向上など、さまざまな課題に対応するためにも、エネルギーに対して高度な分析能力やシミュレーションが必要とされています。
ビッグデータの分析やアーリーウォーニングは、経済社会の発展に不可欠であるため、政府と企業が連携のもとに、シナリオ分析やサプライチェーン分析を通じて、リスクを予測し、適切な対策を講じることが求められています。
【経済安全保障の観点によるリスクのシナリオ分析の重要性】
日本もAIや量子コンピューターの強みを軸に技術管理を徹底し、調達や投資の多角化を図りながら、戦略的な投資支援を行っています。経済安全保障は“ビジネスの制約”という視点だけでなく、“オポチュニティと”して捉えられるべきです。企業の上流から下流まで、さまざまな業界団体や企業が関わっているサプライチェーンでは、経済産業省や業界団体との連携、および対象企業や業界、地政学的な状況を把握することが鍵となるため、官民連携の対話を通じて、それぞれの目線を合わせることが必要です。その際には経済安全保障の観点による、リスクやシナリオ分析が重要なテーマとなります。
また、セキュリティ・クリアランスを持った企業同士で情報を共有し、経済連携やフレンドシップの概念も重要となります。ビジネス上のライバルであっても困った時に助け合える信頼関係は今後の大きな強みとなるでしょう。
【サプライチェーンの多角化など、国際情勢に合わせた対応が必要】
サプライチェーンが寸断されないためのリスクシナリオを立てる際には、ESG投資や地政学への考慮、経済安全保障の視点でのファイナンスの構築も重要です。このような企業の取り組みは、国際情勢の変化に合わせて柔軟に対応すべきであり、特に技術ロードマップや資源の安定確保への重要な基盤となります。
今後も外為法の輸出管理や投資管理、技術管理などの部分を中心に集中的に取り組み、フェアなサプライチェーンと市場ルールの確立に重点が置かれるでしょう。産業支援策も多く提案されており、各産業界との対話が重要視されています。政府が行うリスク分析も産業界との連携を通じて活用され、セキュリティ・クリアランス法案も成立しました。今後も政府と企業との戦略的な関係を築くために、さまざまな対話が行われる予定です。経済安全保障の推進は、日本の経済基盤の強化となるでしょう。