日本企業による海外企業のM&Aが増加したことで、高度なリスクマネジメントを迅速に実践することが求められるケースも増えています。M&Aは、企業(グループ)全体を取得する場合と、事業の一部のみを取得する場合の2つがありますが、悩ましいのが事業の一部取得によるM&Aです。
企業全体の株式取得をする場合は、通常、買主は保険契約も含めて売主企業が持つ契約関係をそのまま引き継ぎます。しかし、事業の一部だけを取得する場合、特に外資系大手企業の特定事業については、売主企業のグループ全体を対象にした包括的な保険プログラムでカバーされていることが多く、M&A後は利用できなくなるケースが多いのです。買主としては、その事業が無保険となる状況を避けるため、買取完了直後から有効となる保険プログラムを用意する必要がありますが、それが簡単ではありません。
複数の国や地域で事業展開する海外の大手企業は、世界のどこで、どの会社に損害が発生しても、グループ全体で包括的にカバーされるグローバル保険プログラムを導入していることが多いのですが、日本ではグローバルに事業展開している企業でも導入企業は意外と少ないのが実態です。全世界のグループ法人をカバーできるグローバル保険プログラムを導入していれば、M&Aで新たに海外事業を取得しても、自社の保険プログラムへの変更で対応できることが多く、その利点を再確認しておきたいところです。
リスクマネジメントの高度化を図る上で、グローバル保険プログラムの設計・運用は大きな鍵になるでしょう。