2022年7月11日
企業内保険代理店の課題と保険仲介業者の活用
日本では伝統的に多くの大手企業がグループ内に企業内保険代理店を持ち、その代理店を通して保険を調達しています。
企業内保険代理店は、その企業グループの変遷や事業内容、さらには経営理念等に精通しており、企業の従業員の個人保険(自動車保険や傷害保険、住宅の火災保険等)の取扱いに長けています。
反面、課題もあります。親会社やグループ会社のリスクマネジメントの根幹となる損害保険に関する業務では、発生する困難な課題などを保険会社に任せ、事務作業を中心に担当しているため経験やノウハウが少ない企業内代理店も見受けられます。近年は海外進出に伴い、親会社が海外のリスクマネジメントやグローバル保険プログラムの組成への関心を高めている場合でも、多くの企業内保険代理店は海外での保険について対応しきれないことも少なくありません。
もともと企業内保険代理店は、保険料の交渉ができなかった自由化前の時代に普及した仕組みです。企業内保険代理店を作り、代理店手数料を得ることは損害保険のコスト負担を下げる唯一の方法でした。自由化以降、保険料は事故を減らす努力と保険会社との交渉によって下げられるようになりましたが、保険料が下がると企業内保険代理店の収入が減ってしまうことが、保険コスト削減の障壁となっていることが多いようです。
保険を担当する部署の責任者が企業内保険代理店に社長や役員として出向・転籍することが人事慣行となっている企業もあり、この場合、保険担当部署は「元上司」に遠慮して、根本的なコスト削減に取り組めないという構造的な問題を抱えることになります。
最近はグローバル保険プログラムを導入する企業を中心に、企業内保険代理店を閉鎖・売却する動きが加速しています。あるいは、親会社の保険契約(建物の財物保険や賠償責任保険等のいわゆる管財契約)からは撤退して、従業員の個人保険に特化することで福利厚生の充実を図るなど、役割を変更するケースも多くあります。
今後、グローバルなリスクマネジメントを実践するには、より充実した体制が必要です。保険に精通した社員を企業内保険代理店からリスクマネジメント担当部署へ動かし、リスクマネジメント人材を充実させつつ、個人契約に特化するという体制変更が日本の大手企業のトレンドの一つになっています。
図1. グローバルリスクマネージメントにおける保険仲介人への期待
グローバルの知見と実績