企業向け保険料率の引き下げにも関わらず、キャプティブ自家保険を求める声は世界的に年々高まっており、その数は2024年に6,290社に達しました。1
キャプティブ自家保険とは、企業が将来の損失に備えて、親会社や関連会社への保険ソリューションの提供を目的に事業免許を取得したキャプティブ保険会社を設立し、自社で保険をかけるリスクファイナンスの仕組みです。
往々にして、キャプティブは、保険会社間の競争が弱まって保険料率が高騰する市場のハード化の折に、コストの抑制と引受キャパシティの確保を目的に設立される傾向があります。しかし、昨今では市場サイクルに関係なく、長期的観点での経済合理性や安定性、柔軟性を獲得するための戦略的リスクファイナンスの手段としてキャプティブを導入する企業が増加しています。
キャプティブ自家保険は、企業が採用するリスクファイナンス戦略の安定性を高めるうえで大きな役割を果たしています。具体的には、自社に固有のリスクプロファイルや戦略に合致した保険プログラムをテーラーメイドで設計し、下記のメリットを体現しています。
市場の不安定性への緩衝材
キャプティブ自家保険は複数年・複数種目・種目横断保険限度額といった統合保険ソリューションを提供可能であるため、年間の保険料負担に一貫性・安定性が生まれます。また、包括的な補償と合理的なリスクマネジメント体制を確保することも可能です。対照的に、従来型の保険契約では1年単位の契約更改が一般的であるため、保険料と補償範囲が不安定になる恐れがあります。
リスクの自己保有と範囲拡大
保険会社ではなく自社のキャプティブにおいて保険料を積み上げる仕組みになっているため、効果的にキャプティブを運営できれば余剰資金が生まれ、その他の重要な投資案件へ活用する道が開かれます。
事業拡大に伴うリスクコストの戦略的な管理
キャプティブ自家保険を導入すれば、事業拡大に伴う保険コストを管理しやすくなります。たとえ市場が軟化していても、事業拡大に伴って保険料も自ずと増加します。しかし、キャプティブを設立すれば、保険コストの上昇前に対策を講じ、自社の成長目標に沿ってリスクファイナンス戦略を策定することが可能です。
特定の市場が軟化しても、全ての保険種目や保険市場が軟化するとは限りません。
下記はその事例です。
代替的なリスク移転(転嫁)保険ソリューションは数多くありますが、その中でキャプティブを導入すれば、あらゆる市場サイクルを乗り越えて自社に最適なテーラーメイド型のリスクマネジメント戦略を構築し、リスクコストの軽減・安定化を図ることが可能です。
過去に高額損失を被ったり、リスクの高い業界で事業を展開したりしている企業は、保険会社から厳格な引受基準を求められ続けています。
アジア地域では財物保険の料率が低下していますが、企業は免責額や自家保険、他の保険商品を積極的に検討しており、パラメトリック保険やキャプティブ自家保険も代替的なリスク移転ソリューションとして大きく注目されています。
キャプティブ自家保険は、従来の保険市場では手配が難しいその他の代替的なリスク移転ソリューションを手配するためのビークルとしても活用されています。例えば、パラメトリック保険ソリューションは事前に設定したトリガーに基づいて迅速に保険金を受け取ることが可能であり、企業が災害に備えてリスクファイナンス戦略を充実させる一助になっています。
キャプティブ自家保険は複雑かつ困難なリスク環境に備えて引受キャパシティを増大させることで、企業がより一層レジリエントで包括的なリスクファイナンス戦略を構築するための原動力になっています。
企業は組織全体で戦略的にコストを抑制してリスクを管理するためにキャプティブ自家保険を活用していますが、その導入に際しては落とし穴にも注意が必要です。 例えば、現地の規制要件への不適合のほか、運営費用やリスク保有の非効率性、不十分なリスク補償などもその一例です。
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1 Business Insurance, 2025 Captive Managers and Domiciles Rankings + Directory