D&O保険は、取締役を含む役員等の経営判断等に関連して、法令違反、不作為、過誤、またはそれらの申し立て等により法的責任を問われた場合に、補償を通じて役員等および企業を守る保険です。
一般的に、D&O保険は以下の3つの補償パート(Side A、B、C)で構成されます。
補償 |
D&O保険が役員等および企業をどのように守るか |
Side A |
個人向けD&O補償:会社が補償できない、または補償を行わない場合(例:倒産時など)に、役員等個人を補償します。 |
Side B |
会社補償:会社が役員等に代わって負担した費用(弁護士費用、和解金、損害賠償金など)を会社に対して補填します。 |
Side C |
有価証券請求に関する企業補償:企業自体が訴訟の被告となった場合に、バランスシート保護として企業を補償します。 |
各補償パートがどのように機能するかを理解することは重要な出発点ですが、企業は自社のD&Oリスクのありかたと必要な補償内容についても慎重に評価する必要があります。保険約款の文言は、実務上、保険金請求への対応に大きな影響を及ぼす可能性があります。国内外のD&O保険に精通した信頼できるブローカーと連携することで、適切な補償水準を確保しながら、競争力のある保険条件を実現することが可能になります。
マーシュは、多くの顧客からの信頼を得て、総額年間1億米ドルを超える保険料のD&O保険を手配しています。マーシュは、貴社のニーズにとって最適かつ費用対効果の高い補償条件を確保することで、貴社のD&O保険が内包する過不足を評価し解決することに貢献します。
1. 日本ではD&O保険は加入義務がありますか。
いいえ。日本では、D&O保険は通常、法令上の加入義務はありません。一方で取締役を含む役員個人の責任リスクを踏まえ、多くの取締役会がガバナンス上の標準的な対応として位置づけています。
海外では実務上は投資家が資金提供の条件として加入を求めるケースも増えています。
2. D&O保険の保険料は何によって決まりますか。
D&O保険の保険料は、企業の業種、損害履歴、取締役会の構成、選択する支払限度額や自己負担額などによって決まります。ただし、価格だけで評価すべきではありません。保険約款の文言は価格と同様に重要です。保険料が低くても、発動要件が限定的であったり、免責条項が広範であったりすると、請求時に大きな補償ギャップが生じる可能性があります。
3. M&Aや事業清算の際、D&O補償はどうなりますか。
役員等は、売却、合併、または事業清算前の意思決定に関して、元の保険契約が終了した後も個人として責任を追及される可能性があります。ランオフカバー(run-off cover)は、そのような事象の後も一定期間D&O補償を継続するものであり、取引完了後に役員等が無保険の状態に置かれることを防ぎます。
4. 複数の市場で活動する地域担当の役員等もD&O保険の対象になりますか。
はい。ただし、多国間にまたがる補償は慎重に設計する必要があります。保険規制は国・地域によって異なり、アジアの複数市場では、現地で認可を受けた保険契約が求められます。地域をまたいで活動する役員等を有する企業では、通常、マスターポリシーと現地契約を組み合わせた、整合性のある地域プログラムが必要となります。これにより、各地でコンプライアンスを確保しながら、役員等を適切に守ることができます。
5. 退任後または退職後の役員等もD&O保険の対象になりますか。
多くの保険契約では、在任中に行われた行為についての損害賠償請求であり、かつ、保険契約の遡及日要件を満たす場合、退任後の役員等も引き続き補償対象となります。更改時には、「退任役員」の定義に加え、将来的に企業が売却または清算される場合を見据えたランオフ手当についても、ブローカーと確認することが重要です。
6. D&O保険と専門職業賠償責任保険(PI保険)はどう違いますか。
D&O保険は、経営判断や監督責任に関連する損害賠償請求等から、役員等個人を守る保険です。一方、PI保険は、顧客に提供する専門サービスや助言に起因する請求から、企業および専門家を守る保険です。専門サービス業やアドバイザリー業のように、両方のリスクを抱える企業では、これら2つの保険を並行して手配することが一般的です。いずれも相互に代替できるものではありません。
7. D&O保険の一般的な免責条項には何がありますか。
標準的なD&O保険では、一般に、詐欺や不誠実行為が立証された請求、故意の法令違反、保険始期前に認識されていた事故のおそれ、などが免責とされます。重要な局面でD&O保険が適切に機能するようにするためには、より有利な免責条件を交渉できるブローカーと連携することが重要です。