マーシュのデータによると、嵐や雹による損害などの自然災害(NatCat)は、世界中の太陽光発電(PV)プロジェクトの保険金請求額の80%を占めています。一方、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)については、グローバルデータを参照した場合、ほとんどの保険事故が運用開始の最初の年に発生し、火災が主な損失原因となっています。
アジア地域における再生可能エネルギープロジェクトの増加と、市場での保険商品の増加により、再生可能エネルギーのための保険の引受環境はソフト化傾向です。アジア地域における再生可能エネルギープロジェクトのスポンサーにとって、これは保険戦略を見直し、迅速で広範囲かつコスト効果の高いカバレッジを確保する絶好の機会となるかもしれません。
しかし、保険会社は以下の点に対して厳格な引受審査を行っているため、企業は再生可能エネルギープロジェクトの迅速かつコスト効果の高い保険カバレッジを確保する際に課題に直面しています。
プロジェクトのリスクプロファイルを形成し、より良い保険条件を得る方法
1. 直接自然災害のリスクを対処する
自然災害はアジアにおける保険引受意欲を左右する最大の要因であり、そのため保険会社はリスクの高い地域に戦略的に、かつ慎重に引受能力を配分しています。その結果、企業は物理的気候リスクモデリングを実務に結び付くインサイトとして活用したり、リスクエンジニアリングによる設計レビューを通じて気候リスクへの耐性を高め、保険会社の信頼を向上させることができます。
2. 保険のカバレッジを見直す
プロジェクトが財務的に持続可能で利益を上げるためには、再生可能エネルギーのディベロッパーやオペレーターは、効果的なリスク管理とリスク移転戦略を通じてリスクの総コスト(TCOR = Total Cost of Risk)を最適化する必要があります。保険のカバレッジがフルバリューでない場合やリスクプロファイルを反映しない場合、超過保険や一部保険となる可能性があります。保険更新に先立ち、評価および事業中断の専門家と連携して、保険プログラムが現在の資産価値に合致していることを確認し、プロジェクトが十分に保険でカバーされることを確認するようにしてください。
3. 信頼できるアドバイザーを活用して、質の高いアンダーライティングサブミッション(引受条件書)の提出を行う
早期関与により、ブローカーやリスクアドバイザーはプロジェクトのリスクプロファイルを形成し、保険会社の引受状況に則した助言をすることができます。また、リスク状況の精緻な把握は、より良い価格設定と柔軟な補償設計に貢献します。しかし、保険会社がより詳細な引受情報を必要とする状況では、マーシュのアジアソーラーアドバンテージプログラムのような専門的な保険ファシリティが、キャパシティ、競争力のある保険料、および有利な条件を引き出すために不可欠です。
なお、本記事/レポートはアジア全域におけるマーケットのソフト化に関する記事/レポートとなります。アジア全域の保険マーケットと比較し、自然災害の激甚化、ケーブル盗難の多発、歴史的な国際保険マーケットとの料率差、などの理由で日本のマーケット自体はハード化している状況であり、高額の支払限度額が必要となる大規模発電所などでは国内保険マーケットだけでの保険組成は年々難しくなってきております。
本記事/レポートから、今まで大きく乖離のあった日本マーケットと海外マーケットの保険条件、保険料差が縮小傾向にあることが読み取れ、このような状況下だからこそ再保険の活用やエクセスレイヤー等の様々な観点での保険設計に関する検討が事業者に求められております。
下記の通りマーシュでは多くの事業者を支援してきた実績がありますが、日本においても豊富な実績を支援体制を有し、国際保険マーケットの理解及び日本固有の状況を踏まえた保険プログラムの組成等で事業者のみなさまを支援可能です。
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マーシュは、独自の洞察と市場アクセスを持つ再生可能エネルギーの業界の先駆者です。再生可能エネルギーエンジニア、技術ブローカー、専門アドバイザーからなる統合チームが、プロジェクトのあらゆる段階—建設前、建設中、運用中—で再生可能エネルギーのプロジェクトをサポートします。マーシュは、アジアで48ギガワット以上を含む、650ギガワット以上の再生可能エネルギーに関する3,000以上のプロジェクトを世界中で支援してきました。