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地政学・テクノロジー・気候変動という3大リスクに対して、金融機関はどう備えるか?

金融機関はいま、レジリエンスの対策不足に直面しています。従来の伝統的な手法では十分対応できないからです。

金融機関は、経済を支える重要な役割を担っていますが、相互依存が強いため、システミックリスク(連鎖的破綻リスク)に脆弱です。そのため各国の中央銀行や金融当局は、金融機関にレジリエンス強化に向けて次の「3つの重点要件」を求めています。

  • 事業継続力と危機管理能力
  • テクノロジーとサイバーレジリエンス
  • サードパーティリスクの可視化 

こうしたレジリエンス強化が求められる背景には、金融機関を取り巻くリスクがこれまで以上に広範囲かつ複雑になっていることがあります。地政学リスクはインフレの変動を通じて与信判断を難しくし、テクノロジーリスクはシステムや外部サービスへの依存によって業務停止に陥ることがあります。さらに気候変動リスクは、これまで財務状況が安定していた融資先にも大きな影響を及ぼすようになっています。以下では、金融機関がこうしたリスクにどう備えるべきかを整理します。

1) 地政学リスクは、与信リスクにつながるのか?

地政学的な緊張によりエネルギー市場や物流に混乱が生じると、借り手の返済遅延や資金調達コストの上昇、インフレにつながり、金融機関の収益を圧迫します。そのため、金融機関には、より慎重な融資判断が求められています。最近の中東情勢でも、地政学的な動きがエネルギー価格や借り手の利益率、市場の見方に即座に影響を与えることが改めて示されました。アジア太平洋地域では、銀行が貸倒引当金を積み増し、融資条件を見直し、製造業・物流・コモディティセクターの動向を注視しています。

地政学リスクがもたらす与信リスクへの備えとして金融機関で対応すべきこととして以下のものが挙げられます。

  • 地政学リスクが自社の従業員・システム・販売網に与える影響を精査し、それがどのように自社の事業に影響を与えるかを分析する。
  • 信用リスク、流動性、金融市場の不測事態を想定したストレステストを実施する。
  • 危機対応の流れと報告プロセスを整理し、意思決定と復旧の優先順位を明確にする。

大切な資産、事業、そしてお客様を守るために、レジリエンスの対応方針を見直しましょう。

2) システム不具合が発生した際、金融機関は迅速に復旧できるか?

東南アジアでは、大規模なシステム障害が発生した場合、企業は1時間あたり平均250万米ドル(約3.9億円)*の損失を被ります。これは世界平均対比32%高い水準です。金融機関ではその影響が特に大きく、1回の障害で多くの顧客の取引や決済が中断され、与信データに不具合が生じ、信頼の低下につながるおそれがあります。*適用為替レートは 2026年9月11日時点

問題は、こうしたシステム障害を引き起こす要因が分かりにくいことです。経営陣や取締役会が「どのベンダー、どのクラウド基盤、どのAIモデルが自社の重要業務を支えているのか」を正確に把握できていないケースは少なくありません。たとえば、ある銀行が与信判断を外部のAIモデルに依存し、決済システムを単一のクラウド事業者に委ね、データ基盤を特定のベンダーに一任しているとします。この場合どれか1つでも止まると、影響はすぐに連鎖し、取引が滞留、収益は悪化し、規制当局への報告につながる可能性があります。

テクノロジーリスクのレジリエンスを高めるために、金融機関として準備しておくこととしては以下のことが挙げられます。

  • 収益や決済を支えるAIモデル、クラウド基盤、重要ベンダーを特定し、それらが止まった場合にビジネスにどのような影響が出るかを整理、把握する。
  • 現実的な代替手段、バックアップ体制、手作業での対応方法があるかを確認し、それらに切り替えた際の顧客への影響と運用負荷を把握する。
  • AIモデルやベンダーの管理責任を明確にし、定期的なテストを実施するとともに、復旧手順を整備する。

3) 金融機関の信用ポートフォリオは気候変動に対応できていますか?

アジアの金融機関や規制当局は、気候変動が融資先に与える影響を注視しています。気候変動の深刻化に伴い、借り手企業の資金繰り悪化や担保価値の変動、業界全体の低迷が懸念されています。特に農業・不動産・エネルギー業界への融資比率が高い金融機関は、長期的な経営リスクを抱えかねません。気候変動リスクによって借り手を取り巻く環境そのものが変わったため、過去の融資データだけでは借り手の返済能力を正しく見通せなくなっています。

気候リスクに備えるために、金融機関としてすべきこととして、以下が挙げられます。

  • 気候変動が様々な業種・借り手に与えうる影響を検証する。
  • 気候変動の影響を受けやすい業種に融資が偏っていないかを確認し、複数の業種が同時に影響を受けた場合に全体のリスクがどれだけ高まるかを試算する。
  • リスク許容度に合わなくなったエクスポージャーは、ポートフォリオを見直して再配分する。

リスクに備え、レジリエンスを高めましょう。

Marshは、アジアで2,350社を超える金融機関のお客さまを支援し、それぞれのビジネスモデル、リスク特性、規制要件に合わせてレジリエンス強化をサポートしています。