金融機関は、経済を支える重要な役割を担っていますが、相互依存が強いため、システミックリスク(連鎖的破綻リスク)に脆弱です。そのため各国の中央銀行や金融当局は、金融機関にレジリエンス強化に向けて次の「3つの重点要件」を求めています。
こうしたレジリエンス強化が求められる背景には、金融機関を取り巻くリスクがこれまで以上に広範囲かつ複雑になっていることがあります。地政学リスクはインフレの変動を通じて与信判断を難しくし、テクノロジーリスクはシステムや外部サービスへの依存によって業務停止に陥ることがあります。さらに気候変動リスクは、これまで財務状況が安定していた融資先にも大きな影響を及ぼすようになっています。以下では、金融機関がこうしたリスクにどう備えるべきかを整理します。
地政学的な緊張によりエネルギー市場や物流に混乱が生じると、借り手の返済遅延や資金調達コストの上昇、インフレにつながり、金融機関の収益を圧迫します。そのため、金融機関には、より慎重な融資判断が求められています。最近の中東情勢でも、地政学的な動きがエネルギー価格や借り手の利益率、市場の見方に即座に影響を与えることが改めて示されました。アジア太平洋地域では、銀行が貸倒引当金を積み増し、融資条件を見直し、製造業・物流・コモディティセクターの動向を注視しています。
東南アジアでは、大規模なシステム障害が発生した場合、企業は1時間あたり平均250万米ドル(約3.9億円)*の損失を被ります。これは世界平均対比32%高い水準です。金融機関ではその影響が特に大きく、1回の障害で多くの顧客の取引や決済が中断され、与信データに不具合が生じ、信頼の低下につながるおそれがあります。*適用為替レートは 2026年9月11日時点
問題は、こうしたシステム障害を引き起こす要因が分かりにくいことです。経営陣や取締役会が「どのベンダー、どのクラウド基盤、どのAIモデルが自社の重要業務を支えているのか」を正確に把握できていないケースは少なくありません。たとえば、ある銀行が与信判断を外部のAIモデルに依存し、決済システムを単一のクラウド事業者に委ね、データ基盤を特定のベンダーに一任しているとします。この場合どれか1つでも止まると、影響はすぐに連鎖し、取引が滞留、収益は悪化し、規制当局への報告につながる可能性があります。
アジアの金融機関や規制当局は、気候変動が融資先に与える影響を注視しています。気候変動の深刻化に伴い、借り手企業の資金繰り悪化や担保価値の変動、業界全体の低迷が懸念されています。特に農業・不動産・エネルギー業界への融資比率が高い金融機関は、長期的な経営リスクを抱えかねません。気候変動リスクによって借り手を取り巻く環境そのものが変わったため、過去の融資データだけでは借り手の返済能力を正しく見通せなくなっています。