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M&Aにおける表明保証保険の活用状況:2025年、アジアの保険金支払額が過去最高に

当レポートでは、2025年のデータをもとに、表明保証保険の保険金請求の動向を分析しています。

M&A関連の保険市場の成熟が進む中で、2025年に事故の通知件数が倍増した主な要因はなんだったのでしょう?

当社のTransactional Risk Insurance Claimsレポート2026による調べでは、2025年のアジアにおける表明保証保険の事故通知件数は40件にのぼり、前年の2倍に急増しました。

同時に請求額も増加しており、アジア地域のお客様に支払われた保険金の総額は8,000万米ドル(約126.4億円)*を突破しました。また、年間の総支払額、および単一案件における最大支払額、どちらにおいても過去最高を記録しています。アジアのM&A保険市場において表明保証保険の活用が着実に広がっていることがわかります。

※為替レートは2026年9月24日時点 1USD = 158.01円

主なポイント

財務諸表関連が、税務関連の表明保証違反を上回り主要因に。租税債務保険の事故通知も急増。

  • 2025年の表明保証保険の事故通知件数は、財務諸表の不適切開示が41%を占め、21%の税務関連の表明保証違反を上回りました。これは、ディールチームの表明保証保険への理解が深まったことで補償範囲を的確に特定・整理できるようになり、より確実に回収できていることを示しています。
  • 租税債務保険の請求件数は、税務当局の監視強化や保険の普及を背景に急増しました。2025年には、2017年の記録開始以来過去最多となる前年比2倍超を記録しました。

財務諸表関連の請求の半数超が免責金額を上回る見込みであり、表明保証保険の有効性が改めて示されています。

  • 財務諸表関連の請求の54%で損害額が免責額を超えており、さらに全体の27%は500万米ドル(約7.9億円)*を超える大きな損失が出ています。
  • これは、不正確な財務情報をもとに企業の価値を評価してしまい、買収後に株式価値が当初の想定を下回るケースが増加しているためです。
  • また、厳しい経済環境を背景に税務当局の調査が厳格化していることから、租税債務保険の請求件数および請求規模は、今後ともに増加する見通しです。

表明保証保険の請求の60%は、保険開始から2年以内に集中しています。

  • 2023年および2024年に発行された保険証券に関する事故通知件数の60%以上が、2025年に報告されています。2年以内に多くの通知が発生していることが分かります。
  • 一方で、2年経過後の請求は27%を占め、2024年比で12%増加しました。表明保証保険は、買収が完了した後も長期にわたりリスクをカバーします。

M&Aに関わる保険の請求は、日本とインドがアジア全体の73%を占めています。

  • 2025年、日本企業のM&Aに係る保険の請求件数はアジアの40%を占めていました。その中の13%が日本国内の表明保証保険に関するものでした。
  • インドが33%で続き、請求通知件数は前年比30%増、単独型の租税債務保険の請求は40%増となりました。
  • 業種別では、製造業が引き続き最多で、全体の請求の48%を占めています。

保険会社における競争の激化を背景に、各社の対応は迅速化しています。その結果、請求受領から30日以内に92%の案件で有無責の判断が被保険者に通知されています。

  • 2025年には、一部の保険会社が通知から3日以内に有無責の判断の提示をしています。2024年の平均審査期間10〜12日と比較すると大幅に早い対応です。
  • 30日以内の有無責の判断は、一般的に保険証券に規定される30営業日よりも早いスピードです。保険会社の請求対応が迅速化しています。

Marshが、M&A関連の保険においてアジア太平洋地域で過去最大となる7,500万米ドル(約119.1億円)*もの納税額の回収を支援

課題:被保険者は、東南アジアで企業を買収した数年後、税務当局の調査により買収に関連する追加の納税義務が指摘されました。その結果、7,500万米ドル(約119.1億円)を超える支払いを求められ、想定外の大きな負担を抱えることになりました。

Marshの支援内容:Marsh Risk AsiaのPEMAチームは、納税義務賠償保険の請求の審査がスムーズに進むよう、関係者間の調整を進め、申請内容を整理し、書類手配を支援しました。これにより、補償適用範囲をめぐる論点を整理し、保険金の支払い遅延や減額を回避することができました。

結果:買い手は、支払いを指摘された税金の全額を補填することができました。これは、Marshのアジア地域におけるM&A保険の案件として、過去最大の保険金支払い額でした。

"現在、アジア地域における保険金請求の通知および支払件数は、過去最高水準に達しています。ディールにおいて保険を選択する際、保険料と同様に重要なのは保険会社の事故対応実績です。予期せぬリスクに直面した際、保険会社に対しては、迅速・協調的・ビジネス上の常識的な対応を求めます。"

Pin Li Lim
マーシュ リスク アジア、

Private Equity and Mergers & Acquisitions Servicesチームリーダー

Global Transactional Risk Insurance Claimsレポート2026

このレポートのポイント:

  • 新たなリスクや、表明保証違反の主な原因を把握する
  • 業界別・地域別に、自社のリスク水準をベンチマークする
  • 実際の請求データをもとに、財務的な影響を定量的に把握する
  • 今後の対応や戦略の検討に役立てる

M&Aに係るリスクをカバーする3つの主要な保険商品

  • 表明保証保険(W&I保険)
    企業買収や事業・資産の取得に伴う、表明保証違反などのリスクをカバーします。たとえば、売り手が開示していなかった契約上の問題や、財務情報の誤記載や不足が見つかった場合などに役立ちます。M&A取引で、買い手が想定外の損失を負うリスクに備える際によく利用されます。
  • 租税債務責任保険
    M&Aに伴う税務上の論点を切り分け、万が一の税務リスクを保険会社に移転できます。たとえば、税務当局から取引内容について指摘を受け、追加の税負担や追徴課税が発生する可能性がある場合などに活用されます。
  • 偶発債務保険
    既に把握されている法務・規制上のリスクについて、将来の損失リスクを保険会社に移転できます。たとえば、訴訟の可能性や規制当局からの調査、契約上の紛争など、すでに認識されているが将来の影響額が読みにくいリスクに備える場合に有効です。取引後に想定外の負担が発生するリスクを抑えるために使われます。

マーシュ PEMAチームについて

2025年、Marsh RiskのPEMAチームが支援した案件において、総額8,000万米ドル超(約1,270億円)*の保険金がお客様に支払われました。その中には、7,600万米ドル(約1,207億円)*の租税債務に関する請求が含まれており、アジア地域における単一案件として過去最大の支払いとなりました。

PEMAチームは10年以上の実績と1,000件超の取引支援経験をもとに、法務・税務の専門知識を活かし、プライベート・エクイティや事業会社のM&Aリスクマネジメントを支援しています。

保険金請求が過去最高水準にある今、M&Aに係る保険の補償内容を見直す絶好の機会です。リスクマネジメントや損失の軽減について、ぜひお気軽にご相談ください。