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PE向けニュースレター Vol.10

経営者アセスメント

M&Aにおける経営者アセスメントの重要性について解説します。
Technology and financial advisory services. Business teamwork and working on digital laptop computer with advisor showing plan of investment to clients at table office.

M&Aにおける経営者アセスメントの重要性

前号のニュースレターで紹介した通り、経営統合後の新たなビジョンや経営計画の達成のためにはリテンションした経営陣のリーダーシップやマネジメント力がカギとなる。

PE向けニュースレター Vol.9:経営者リテンション

しかし、買収後の経営戦略はこれまでと異なることが多い中で、現経営陣が買い手の描く買収後の経営戦略をリードできるかどうかは冷静に見極める必要がある。そこで買い手の目線では、経営者の実態把握が重要となる。例えば、現在の経営陣は経営統合後にリーダーシップを発揮できる人材か、そのポテンシャルがあるか、マネジメントを担う上で懸念点がないか等である。これらの実態把握から経営陣の課題が何かを特定し、課題に対する打ち手を実行することが買い手のリスク軽減に繋がる。特定した課題次第では、経営陣の一部入れ替えも含めて検討することも考えられる。

このような適切な経営チームの組成は組織・人事領域においては投資対効果の観点で大きなイシューであるものの、デューデリジェンスの段階で経営者をアセスメント(能力評価)することは通常難しく、オークション形式のディールである場合は大抵実施できない。なぜなら経営者アセスメントの実施を持ちかけること自体が不信感を招き、ディールにおいて不利な状況を作るからである。
デューデリジェンスの時点で現実的に可能なことといえば、開示情報から現在担っている責任・権限、経歴、報酬水準、インセンティブ等を把握することや、一部マネジメントインタビューによって経営陣の能力を一定程度見極めることぐらいであり、後述するような体系的な手法に基づき実施することは難しい。
経営者アセスメントは、経営陣との信頼関係が構築できた後、買い手が描く経営戦略の実現を通じてサステイナブルな成長を実現するという文脈において実施されることが通常である。

Day1以降に通常行われる経営者アセスメントにおいて、外部パートナーを活用するケースが多くなっている。アセスメントに専門スキルが必要なことに加え、買い手も経営陣と既に関係を構築しているケースが多く、客観的な評価が難しい可能性もあるからである。
このような局面では専門的な知見を持つ組織・人事コンサルティング会社である、弊社のような外部パートナーによる経営者アセスメントを通じて、経営陣一人ひとりの強みや課題・リスク、それらに対する打ち手を検討・実行することが買収後の経営にとっても効果を発揮する。この経営者アセスメントはM&Aの場面だけではなく、エグゼクティブサーチや自社の経営陣のサクセッションを行う際にも用いられており、多方面で重要性が高まっている。

経営者アセスメントの流れ

経営者アセスメントの流れは以下の通りである。

  1. アセスメントの目的・実施時期の策定
  2. 経営陣におけるアセスメント対象者の特定
  3. アセスメントの担い手及びアセスメント手法の決定
  4. アセスメント実施
  5. アセスメント結果の分析及び課題特定、打ち手の検討・実行

1点目の目的について、経営チームの強化・育成を目的とするケースが多い。現在の経営陣の見極めを目的として、アセスメント結果次第では入れ替えを図るケースもあるが、経営陣の個々の経験・スキルに基づいた適切な配置を実現するための材料収集や、更なる活躍に向けた成長課題を特定することが一般的である。実施時期はDay1以降に経営状況を見極めながら柔軟に策定する。

2点目のアセスメント対象者の特定について、経営陣の全体または一部のみのケースがある。また、経営陣の離職や交代も想定して、次世代の経営陣候補を対象とするケースもある。後者の場合、買収先企業の人的リソースを確認することに繋がるため、1点目のアセスメントの目的次第で対象者を調整することが望ましい。

3点目の担い手について、買い手以外の第三者がアセスメントを担うケースが多い。
その際のアセスメント手法は目的・対象者に応じて検討するが、経営陣としての職務・役割発揮が高いレベルでできるかを判定する意味では思考・行動特性を分析し、個人の強みや課題を抽出することが重要となる。その観点では外部パートナーによる見極めの場合、Behavioral Event Interview(行動探索型インタビュー。以下BEIと表記)の手法を用いることが多い。BEIとは最低1.5~2時間程度で過去数年内の取組みのプロセスや結果のヒアリングを行い、経営人材としてのポテンシャルやリーダーとしてのコンピテンシー(高いレベルの思考・行動特性があるか、どのようなマネジメントスタイルか)を確認の上、評価する手法である。これにより過去の行動に基づいたアセスメントを実現できる。
また、経営者アセスメントの重要性を考慮すると、多面的に測定することが肝要である。この場合、BEIに加えて上司・部下・同僚からの行動評価(360度評価)や個人の価値観や志向性等を測るパーソナリティテスト(Hogan Assessments等)を組み合わせることで様々な観点で評価材料の収集が可能となる。

4点目のアセスメント実施について、BEIのインタビュー方法と評価の流れは図1の通りである。

インタビュアーは対象者の過去数年内の取組みに関する「行動事実シート」に基づき、インタビューを行う。各エピソードにおける行動プロセスやその結果を確認した上で、なぜそのように行動したのか等の意図や背景を詳細に収集する。
この際、関係者(上司・部下等)との役割の違いや周囲の反応等を注意深く確認することは対象者自身の行動がどの範囲まで及んでいたのか精緻な把握に繋がり、有効なヒアリングとなる。その後、収集内容に基づき、あらかじめ定めた評価基準と照らして点数化を行う。
弊社は評価基準として、グローバル共通でリーダーに求められる要素を4分野に体系化し、合計16項目のコンピテンシーに構成した「Mercer Essential Leadership Competency」(図2)を用いることも多い。更に各項目に4つのレベル別定義を設けることで、各コンピテンシー項目のレベルの高低を判断している。

最後の5点目では、アセスメント結果についてコンピテンシーの観点で個人の強みと課題を特定し、それに対する打ち手を買い手に報告する。これらの情報を踏まえ、買い手は買収後の経営チームの強化・育成に向けて、打ち手の検討・実行を図る。以上が経営者アセスメントの流れである。
 

現在の経営チームの強化・育成を目的としたケース

最後に、弊社で実際にご支援したケースについて紹介する。M&Aを通じて子会社化した企業に対して、経営統合後の子会社のガバナンス強化の一環で経営チームの強化・育成と将来の経営チーム候補のポテンシャル測定を目的としたケースである。図3の通り、経営者の人材要件のフレームワークを設定し、アセスメント手法としてBEIを選択し、合計約30名のアセスメントを実施した。

本ケースではアセスメント結果から以下3点の分析を行った。

  1. 現経営陣の各自の強みや課題の明確化
  2. 次世代の経営陣候補の社長や上位ポジションへの任用に向けた、現時点のレディネスの確認
  3. 任用に向けた育成課題の明確化

 

1点目の分析を基に、経営陣の執行体制のリスク(組織全体としての強みや弱み、課題やリスク等)を特定し、今後の経営チームの強化・育成の打ち手の検討を行った。更に、経営陣に求められるミッションや期待役割を再整理し、Job Description(ポジションに求められるミッションや期待役割、必要な職務経験、知識・スキル等が記述された書類)を策定している。これにより経営陣に求められる人材要件を可視化でき、2・3点目の任用に向けた次世代の経営陣候補の現時点のレディネスと育成課題の抽出に繋げることができる。具体的には経営陣のポジション毎に作成したJob Descriptionに照らして、後継者候補の充足状況(特に後継者候補が乏しく、サクセッションリスクのあるポジションがないか等)やそのポジションに向けて求められるコンピテンシー項目やレベルに足りない点がないか等を明確にする。不足がある場合は今後の強化・育成ポイントとしてタフアサインメント(異動配置、特別ミッションの付与等)を通じて成長を促すよう方針を策定し、実行に移している。

 

以上の通り、アセスメントは個人に加えて、経営チームの強みや課題を詳細に把握することができ、将来に向けた具体的な打ち手の検討・実行に効果的な取組みである。本ニュースレターを通じ、M&Aにおける経営者アセスメントの重要性や流れの理解が進み、買収後の経営チームの強化を検討される際の一助になれば幸いである。

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