LDIは、建設契約上の遅延損害金(Liquidated Damages、以下「LD」)を負担する可能性がある請負業者向けの保険です。プロジェクト遅延が発生した際、契約で定められた遅延損害金額を、保険条件に従って補償します。
LDIは通常、「契約優先(contract-first)」の考え方で設計されます。保険約款は、元の建設契約におけるLD条項や工期延長(EOT)条項を、できる限り正確に反映するよう設計されます。
LDIは、厳格で交渉の余地がない遅延ペナルティを負う請負業者にとって重要な補償手段です。こうしたペナルティは、請負業者の支払能力やキャッシュフローを大きく圧迫するおそれがあります。
スキームによっては、請負業者のLD金額を超える範囲で、プロジェクトオーナー側のサービスレベル合意(SLA:Service Level Agreement)未達による損失まで補償範囲を拡張することが可能な場合があります。
プロジェクトの遅延ペナルティが請負業者の利益率を上回るおそれがある場合や、大きな財務責任が生じる可能性がある場合、LDIは不可欠になります。特に、以下の4つの条件下で重要性が高まります。
なお、操業開始遅延(DSU:Delay in Start-Up)保険も遅延による財務損失を補償しますが、補償対象はデータセンタープロジェクトのオーナーに限られます。また、建設工事保険(CAR:Construction All Risks)または海上貨物保険(Marine Cargo)で補償される物的損害に起因する遅延が発生した場合にのみ保険金支払いの対象となります。DSU保険は請負業者ではなく、オーナー側を対象とする保険です。
LDIは、請負業者が建設契約に基づき遅延損害金の支払義務を負い、かつ保険条件を満たした場合に補償されます。補償範囲は案件ごとに調整され、主に次の点を確認します。
契約内容、市場環境、保険会社の引受方針によって、条件は異なります。実務上は、契約のリスク配分とプロジェクト管理体制を整えた上で、保険設計を詰めるのがポイントです。
手配の進め方:
設計時の主な論点:
アジア市場では引受キャパシティの拡大や競争の激化により、LDI手配の検討がしやすくなってきています。
アジアのデータセンター建設案件において、オーナーが将来のテナント(運営者)に対して負うSLA違反ペナルティに基づいて、請負業者に大きな遅延損害金リスクの移転が求められました。日額ペナルティと責任上限が設定される条件下で、マーシュは以下のアプローチにより課題解決を支援しました。
マーシュのアプローチ:
結果:
マーシュはアジア地域におけるデジタルインフラ関連と建設リスク分野の大手ブローカーとして、複雑なデータセンター建設プロジェクトを支援してきた実績があります。
マーシュのデジタルインフラ契約アドバイザリーチーム(元契約弁護士、リスクマネジャー、保険スペシャリストで構成)は、先進的な社内AIツールを活用して、デジタルインフラ・プロジェクトのリスク分析と保険設計を提供しています。
データセンター建設では、多数の複雑な施工パッケージが関わる傾向があります。プロジェクト全体のエコシステムにおける契約条件の整合性を確保することで、補償の齟齬を防ぎ、プロジェクト成功を実現することが重要です。
遅延損害金リスクの評価や、LDIの導入可能性に関するご相談は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。追って、担当者よりご連絡を差し上げます。