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エルニーニョによる猛暑と水不足:ほとんどのデータセンターが認識していないいない事業中断リスク

【注】こちらの記事は、エルニーニョ現象が東南アジアに主に与える影響についての記載になります。日本では、エルニーニョ現象により、通常より夏の気温上昇が抑えられますが、黒潮大蛇行などによる日本近海の海水温の上昇により、近年の酷暑化が進んでいると考えられています。

エルニーニョは東南アジア全域で猛暑と水不足を引き起こしています。2026年のオックスフォード大学の調査によると、ホーチミンとバンコクはすでに世界有数の猛暑リスク都市にランクされており、高温が湿度や過密な都市人口と重なって地域全体のリスクを高めています。

この猛暑リスクは、東南アジアで最も急速に成長しているデータセンター産業への影響を強めています。東南アジアのデータセンター開発業者・オーナーにとって、猛暑と降雨量の減少は水供給と電力供給に負荷をかけます。それらが機能不全に陥ると、冷却システムが連鎖的に停止し、事業中断につながります。

同様のプレッシャーは、通信ネットワーク、半導体メーカー、機器サプライヤー、ユーティリティ企業を含むデジタルインフラのエコシステム全体に及びます。建設フェーズと操業フェーズはそれぞれ異なるリスクにさらされており、固有の対応策が求められます。

建設フェーズ:猛暑と水不足が工期を遅らせるしくみ

猛暑と水不足は、建設現場に次の3つの形で影響を与える可能性があります。

  1. 猛暑による労働生産性の低下
    気温が28℃を超えると、1℃上昇するごとに生産性は最大57%低下し、猛暑ストレス下の労働者は熱中症を発症するリスクが4倍高まります。アジア各国の規制当局も対応を強化しており、香港労工処とシンガポール人力省はいずれも、屋外作業における猛暑ストレス対策を最近強化しています。

  2.  水不足による水使用型作業の停滞
    エルニーニョ期間中、建設現場は他の産業やユーティリティと同時に水資源を奪い合います。たとえばマレーシア政府は、半導体産業へのリスクを理由にペナンの重要ダムを守るために、すでに人工降雨を実施しています。エルニーニョの影響で降雨量が減り、貯水池が逼迫しているためです。

  3. 極端な気象によるサプライヤーの混乱
    エルニーニョがもたらす熱波と水不足は、サプライヤーや製造拠点の操業に影響し、物資の出荷を遅らせる可能性があります。重要な機器の到着遅延により、設置・試運転も後ろ倒しになります。これにより納期プレッシャーと遅延損害金(LD)のリスクが更に高まり、工程を圧迫します。

1日の工期遅延がそのまま引き渡しの遅れとなり、資金調達コストが発生し続ける中で収益の開始も先延ばしになります。請負業者は天候を理由に工期延長を求めることができ、遅延ペナルティを免れる場合があります。しかしオーナー側は、テナントや買主との間の遅延損害金責任をなお負う可能性があります。建設遅延保険(Delay in Start-Up)は一般的に物的損害を伴う場合にのみ発動するため、熱波や水不足のみに起因する遅延は通常は補償対象外となります。

プロジェクトの遅延や損失を回避するために、マーシュがデータセンターの極度の高温や水不足への対応をどのように支援するか

  • 気候リスクコンサルタントは、独自のソリューション「Construction Lapses Attributable to Weather(CLAW)」を活用し、プロジェクトのスケジュールに対して降雨量・気温の予測をモデル化します。これにより、過去の平均値ではなくモデル化された実態に基づいたコンティンジェンシーを設定できます。また、Sentriskは、エルニーニョによる混乱が重要機器の納入を遅らせる可能性のある箇所の特定にも役立ちます。
  • マーシュのデジタルインフラ契約アドバイザリーグループは、元弁護士、リスクマネージャー、保険スペシャリストで構成されており、補償のギャップを解消し、潜在的なクレームに備えた最良の保険を確保するための包括的な契約レビューを提供します。
  • 建設完成遅延保険が発動しない場合でも、パラメトリック保険を活用することができます。これは、事前に設定したトリガー(たとえば特定気温を超えた連続日数)が満たされた時点で、あらかじめ合意した金額が支払われる仕組みです。

操業フェーズ:水不足と電力網の不安定化が事業中断をもたらすしくみ

操業中の稼働率を最大化するには、コスト効率の観点から計画・立地場所選定の段階で将来のエネルギーおよびユーティリティの課題を想定したモデリングを行うことが最も効果的です。施設が稼働を始めると、リスクは施設の外側に移行します。以下の3つの依存関係が同時に圧迫されます。

  1. 冷却需要の増加と水の希少化が同時進行する
    持続的な高温は冷却需要を押し上げる一方、エルニーニョによる干ばつは水の利用可能性を低下させます。水は消火設備や一般操業にも不可欠であり、地域的な干ばつは自治体による使用制限を招くとともに、代替水源のコストを引き上げます。

  2. 機器サプライヤーも水と電力の不足に直面する
    データセンターの重要機器を支える半導体メーカーも、同様の水・電力制約に直面しています。部品が製造された後も、エルニーニョは輸送に影響を与えます。たとえば、水位低下によりパナマ運河は1日あたりの通過船舶数を削減しており、一部の船舶は優先通過権の入札に100万米ドル以上を支払ったとも報じられています。

  3. 電力需要の増大と発電・バックアップ容量の制約が衝突する
    気温上昇が電力需要を押し上げる一方、干ばつは水力発電の出力を低下させます。このリスクはすでに2023年に顕在化しており、地域的な干ばつにより東南アジアの水力発電出力は1年間で9.5%減少しました。そのため石炭・ガス発電への依存が高まり、需要ピーク時の電気代が上昇しました。また古くなった送電網にも負担がかかりました。また、BESS(蓄電池システム)も暑さが続くと冷却性能が低下し、熱暴走のリスクが高まるため、温度管理が非常に重要になります。

エルニーニョによる混乱が物的損害を伴わずに発生した場合、従来の事業中断保険は発動しない可能性があります。また、ユーティリティや仕入先の拡張補償は保険約款によって内容が異なるため、オペレーターは未保険の収益損失やSLA違反責任にさらされるリスクがあります。

エルニーニョが収束しても、リスクは終わりません。エルニーニョからラニーニャに移行すると、リスクプロファイルは熱波・干ばつから大雨・洪水へと変化し、排水設備、変電所の設計、設置場所の選定、事業全体の継続計画に影響を及ぼします。

"リスクはデータセンターの敷地内で止まりません。エルニーニョは電力網、水供給、冷却システムに同時に圧力をかける可能性があります。こうした圧力が物的損害を伴わないダウンタイムを引き起こした場合、多くのオーナーやオペレーターは、保険が適用されないことに後になって気づくかもしれません。"

Larry Liu
Marsh Risk Asia コミュニケーション・メディア・テクノロジー リーダー

 事業中断を防ぎ稼働率101%を維持するためのマーシュの支援

  • マーシュのH2O-Riskは、エルニーニョの予報を用地ごとの水不足確率・継続期間・財務的影響の予測に変換します。状況が悪化する前に、水源確保、冷却戦略、事業継続についての意思決定を行うためのインサイトをオペレーターに提供します。
  • サプライチェーンのリスクに対しては、マーシュのSentriskがサプライヤーの集中度と自然災害エクスポージャーをサプライチェーン全体にわたって特定します。これにより、エルニーニョによるサプライヤー拠点での混乱が自社の操業に影響を及ぼしうる箇所を把握できます。
  • マーシュのリスクエンジニアは、冷却システム、ユーティリティ、バックアップ発電、BESSの仕組み、消火設備を評価し、エルニーニョとラニーニャの両シナリオに対して事業継続計画のストレステストを実施します。これにより、気候サイクル全体を通じて運用上の閾値がどこで限界に達するかを特定します。
  • マーシュは、パラメトリックカバーを、施設に関連する一次・二次リスクから生じる操業・収益上のしきい値に合わせて組成・手配することができます。対象となるトリガーには、降雨量の不足、干ばつ指数、水の利用可能性のしきい値、施設内の温度計測値などが含まれます。マーシュのパラメトリック専門チームが、トリガー設計と限度額設定の定量的根拠を提供します。

"パラメトリック保険は、建設フェーズにおける猛暑による工期遅延から、冷却システム不全による操業中断まで、あらゆる段階に対応できるように組成することが可能です。物的損害がない場合でも、従来の事業中断保険が応答しないような損失をカバーします。”

Si Si He
Marsh Risk アジア・インド オルタナティブリスクソリューション リーダー

マーシュが選ばれる理由

マーシュは、デジタルインフラおよびデータセンターのライフサイクル全体—立地場所選定・建設から操業まで—にわたってデータドリブンなインサイトの提供とリスク対応の支援で、世界の主要な開発業者・オペレーターから信頼されています。

  • マーシュのソリューションは、建設フェーズから操業フェーズまで、データセンターのライフサイクル全体を通じてリスク管理を支援する包括的な体制を整えています。
  • 建設・操業フェーズで127億米ドルのコミット済み引受キャパシティ
  • 世界のデータセンター上位25社のうち75%がマーシュと取引
  • アジアに100名以上の気候リスク・レジリエンス専門家
  • アジアで年間500件以上のサイトインスペクションを実施
  • アジアで年間30兆米ドル相当の資産を気候リスクに対してモデル化
  • パラメトリック保険の契約実績170件以上
  • 気候リスクに関する著作・出版物20本以上

“エルニーニョは、建設遅延から操業上の負荷まで、連鎖的なリスクを生み出します。従来の事業中断保険では必ずしも対応しきれないリスクです。その連鎖がどこで自社に影響するかを理解することが、地域の天候予報を実行可能なプランに変える第一歩です。"

Graeme Riddell, 博士
Marsh Risk アジア・太平洋 気候・サステナビリティ リーダー

エルニーニョはすでに始まっています。今行動しましょう。

エルニーニョは2027年初頭にかけてさらに強まると予測されており、結果を変えられる意思決定を行う機会は今です。マーシュにデータセンターの気候リスクアセスメントをご依頼ください。熱波、水不足、ライフラインの混乱が建設予備費や操業上の許容範囲を超える箇所、およびリスク緩和策・事業継続・保険判断の優先事項を特定します。

今すぐ気候リスクアセスメントをご依頼ください